このまま溶けてしまえば 


「もし…もしも生まれ変わることができるなら」

ぼんやりと窓の外を見ていた僕は、ゆっくりと振り返る。
白いベッドの上で上半身を起こし、彼女は微笑んだ。

「起きて大丈夫なの?」

彼女の頬は異常なまでに白く、シーツやカーテンに紛れてしまいそうだと僕はよく思った。

「大丈夫。今日は気分がいいの。」

「そう・・・・それで?生まれ変われたらなんだって?」

僕は、ベッド脇のパイプ椅子に腰をおろす

「もし生まれ変われるなら・・・人間以外のものになりたいわ。」

彼女の突拍子な発言に、僕はまたか、と溜め息一つ。

「また、抽象的なことを言うね。」

「だって退屈なんだもの。」

白い頬を不満そうに膨らませ、彼女は窓の外へと目を向ける。

「こんな籠、すぐにでも飛び出してずっとずっと遠くまで飛んでいけたらいいのに。」

寂しげに双眸を伏せると、頬骨の辺りに睫毛が影を落とす。

「そう・・・・・。じゃあ、僕は君がそうなれるように祈ってるよ。」

「・・・・どうでもいいって顔に書いてある。」

「よくわかったね。」

僕は笑う。
彼女は呆れたように深い深い溜め息を零した。

その翌日、彼女は眠るように旅立っていった。
僕は、空き部屋になった病室から外を眺める。
彼女がずっと見続けてきたこの四角い世界は、とてもちっぽけで・・・僕の胸を締め付けた。
ぼんやりとした視界の隅で蝶が舞う。
鮮やかな羽をはためかせ自由に空を泳ぐ姿を、僕の目は自然と追っていた。
彼女が再びこの世に生を受けるとき、叶うならばあの蝶のように自由に羽ばたく羽を授けてほしい。
視界がぼんやりと曇って、乾いた頬を温かいものが伝っていった。



僕の祈りが届いていれば幸いです。



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