06 大炎上
「――っくしゅん」
室内で響いた小さなくしゃみに全員が顔を上げた。
「柚ちゃん風邪ひいた!?寒い!?」
逸早く反応した響は、自分が着ていたジャケットを柚葉の肩に掛けてやる。
「さすがというか、なんというか…。」
その様子を見て、軽く首を傾けて呟く沙枝。
「変態がっ…」
露骨に嫌そうな顔をする冬樹。
が、しかし響はといえば…
「嫌だなぁ、冬樹妬いてんのv?」
まったく堪えていなかった。
響が言葉を紡いだ瞬間、ブツンッ……と確かに何かが切れる音が部屋中に響き渡る。
「――ッ死ねっ!!1度といわず2度死にさらせっ!!!!この図体デカイだけの唯の馬鹿がっ!いやっ、救いようのない馬鹿やっっ!しかも+α変態やぞ変態!!こんのっ能無し変態がっ!!!」
定番のマシンガントークの起爆スイッチはいとも簡単に入ってしまった。
綺麗に整った顔が鬼のような形相に変わって響に襲い掛かる。
「冬樹ぃ〜!折角の可愛い顔が……!」
響は形の良い眉を歪めた。
「可愛い彼女持つと大変ね。」
「そうなんだよ〜!」
「黙れこのオレンジがっ!!日本人ならさっさとその軽い頭直せやっ!!!!」
途中から口を挟んできた沙枝にも容赦なく冬樹の攻撃が飛んだ。
こうなると冬樹のマシンガントークは留まることを知らない。
「あんたの石頭に比べればそりゃぁ〜アタシの頭は軽いでしょうね。」
「冬樹ぃ〜沙枝、やめなよ。」
冬樹の口が開きかけたとき、事の元凶である響ののほほんとした声が二人を仲裁した。
「響ちゃん、火に油注ぐとどうなるか知ってる?」
柚葉は、上にある響きの顔を見上げて呟いた。
その言葉に響は意味が理解できずにキョトンとした顔をする。
「お前が言うなっ!!!!!」
室内で響いた怒声。
「やっぱり大発火しちゃったね。」
「いや…大炎上でしょ。」
蒼紫は視線を本に向けたまま言った。